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代謝性アシドーシスとは?【詳しい原因や症状を分かりやすく解説】

<監修医師 まっちゃん>

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代謝性アシドーシスという言葉を聞いたことがありますか?難しいように感じるかもしれませんが、実は今までに症状が出た方もいるはずです。

今回はそんな代謝性アシドーシスについて説明していきます。

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代謝性アシドーシスとは?

 

代謝性アシドーシス呼吸以外の原因によって体内のバランスが酸性になったことを言います。

理科の授業で酸性とアルカリ性と習ったと思いますが、体の中にも酸性とアルカリ性があります。体の中のバランスがどちらかに傾きすぎないように保っているのです。

 

私たちの体のバランスはpHと言って、水素のイオン濃度で表しています。だいたい7.4(7.35~7.45)が普通で、血液で見ることが出来ます。

体のpHが低い「酸性に傾いている」、「アシドーシス」ともいいます。反対にpHが高い「アルカリ性に傾いている」、「アルカローシス」といいます。

 

また、「呼吸性アシドーシス」という言葉もあります。呼吸が原因で体のバランスが酸性に傾いた状態のことです。

普段意識せずにしている呼吸が原因となってバランスが崩れることもあります。呼吸性アシドーシスは、閉そく性肺障害や呼吸筋麻痺、または呼吸中枢抑制などがの原因で起こります。

 

肺胞内の換気が低下し、動脈血中二酸化炭素分圧(PaCO2)が上がるため、動脈血ガス分析では、pHの低下,PaCO2の上昇が認められます。

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代謝性アシドーシスが起きるメカニズム

 

次に、代謝性アシドーシスが起きるメカニズムについて化学的に説明していきます。

 

代謝性アシドーシスは呼吸以外の原因によって体の中のバランスが酸性になってしまった状態の事だと説明しました。

体のバランスが酸性になってしまうことが原因ですが、酸性の物質が体に溜まっていくこと、逆にアルカリ性の物質が体から無くなってしまうことの2つの原因があります。

 

主に酸性の物質は水素イオン、アルカリ性の物質は重炭酸イオンが関わっています。

私達の体は水素イオンが多くなることで酸性に傾いた時、重炭酸イオンという物質と組み合わせて二酸化炭素に変わります。

 

二酸化炭素は肺で呼吸をすることによって体の外に排出されます。

水素イオンと重炭酸イオンのどちらかの量が増えたり減ったりしすぎることで酸性やアルカリ性の性質に傾いてしまい、血液中のpHのバランスが崩れる、というメカニズムになっているのです。

 

血液中のpHについてはこちらを参考にして下さい。

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代謝性アシドーシスの10の症状

 

代謝性アシドーシスのメカニズムが何となく分かって頂けましたか?ちょっと難しかったかもしれませんが、次は代謝性アシドーシスの症状について説明していきます。

 

軽度症状

軽度な症状としては以下のような症状があります。

✅ 手足や唇のしびれ

✅ 呼吸困難

✅ めまい

✅ 眠気

✅ 激しい耳鳴り

✅ 悪寒

先ほどのメカニズムでも説明したように、体のバランスが酸性に傾くと水素イオンと重炭酸イオンによって二酸化炭素を作ります。

酸性に傾けば傾くほど作られる二酸化炭素の量は多くなり、そんなとき体は二酸化炭素を体の外に出そうとして、呼吸する数が増えて過呼吸(呼吸性アルカローシス)になります。

 

ですが、呼吸を沢山することによって今度は逆に二酸化炭素を出し過ぎてしまい、体に酸素が多くなる事で呼吸が出来にくくなります。

先ほど挙げた症状は、体の中の酸素が多くなってしまう事で起きる症状とも言えます。

 

症状が起きてしまった場合、紙袋で口を覆って呼吸をする事で対処する事は知っているかと思います。

一度体の外に出された二酸化炭素を体に取り入れることでよくなる、という事なのですが、逆に酸素が足りなくなる事もあるので注意が必要です。まずは落ち着いて呼吸のリズムを整えるようにしましょう。

 

重度症状

重度な症状として以下に挙げる症状があります。

✅ 強い吐き気

✅ 血圧低下

✅ ショック

✅ 昏睡状態

体の水素イオン濃度pHが7.1未満になると重度な症状になります。

 

軽度症状であるように二酸化炭素が体に溜まっていき、強い眠気や脱力感を感じ始めます。

状態が悪い方に進んでいくと、意識がもうろうとして吐き気や嘔吐の症状があり、更に進むと血圧が下がり、ショック、昏睡状態になり、場合によっては亡くなることもあります。

 

昏睡状態についてはこちらを参考にして下さい。

【関連記事】
昏睡状態とは4つの状態です【回復の可能性について解説!】

 

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代謝性アシドーシスの様々な原因

 

次に代謝性アシドーシスの原因となる様々な状態を説明していきます。

 

ケトン体

ケトン体という物質の名前を聞いたことがない方もいるかもしれません。

ケトン体が深く関わってくる病気は糖尿病です。糖尿病との結びつきが分かりづらいかと思うのですが、糖尿病は血糖値を下げるインスリンというホルモンが体に足りず、体から糖分の代謝が出来なくなります。

 

糖分は体のエネルギーとして欠かせないために、脳が働かなくなるなどの症状が出てきますが、脳が働かなくなっては困るので、体はタンパク質や脂質を代わりのエネルギー源にしようとして分解します。

 

タンパク質が分解される時に一緒にケトン体という物質も作られるのですが、このケトン体が酸性に傾かせる原因になるのです。この状態のことを糖尿病性ケトアシドーシスと言います。

 

乳酸

乳酸については簡単に説明しましたが、酸性の物質です。

乳酸が増えてしまう場合として腎臓や肝臓の障害、ショックや心不全などを引き起こした方に乳酸が溜まりやすい傾向があります。

 

乳酸が溜まってアシドーシスになった状態のことを、乳酸アシドーシスと言います。

乳酸アシドーシスは重度症状に挙げられ、急激に発症して放っておくと症状が悪化し昏睡状態になり、2人に1人は亡くなってしまう怖い状態です。

 

下痢

代謝性アシドーシスになる原因にあるように重炭酸イオンが大量に体から失われていくことがありますが、その症状としては下痢があります。

腸の消化液の性質はアルカリ性な為、下痢が続くことによって消化液も体の外へ出されてしまい、体の中のバランスが酸性へ傾きます

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代謝性アシドーシスが引き起こす5つの病気

 

この代謝性アシドーシスの症状が慢性化すると、くる病,骨軟化症,骨減少症などの骨の病気を引き起こす可能性も出てきます。

骨が原因の病気についてはこちらを参考にして下さい。

【関連記事】
破骨細胞は骨吸収する!【骨芽細胞との関係や疾患を徹底解説】

 

腎臓の機能低下

ケトン体や乳酸でも説明したように腎臓が障害されることが原因となってケトアシドーシスなど代謝性アシドーシスになります。

 

腎臓の働きは、体の中の余分な水分などの不要なものを尿として体の外に出します。

乳酸やリン酸、硫酸などを分解して水素イオンにして尿として排出することや、重炭酸イオンを再吸収して水素イオンのバランス保ちます。

 

腎臓の機能が低下して腎不全などになると水素イオンが体に溜まることで代謝性アシドーシスになります。

また、糖尿病の方に使われる内服薬にメトホルミン(メルビン)というビグアナイド系の薬があります。

 

この薬は腎臓から尿として排出されるのですが、腎臓が障害されていることで体の外に排出されず、乳酸アシドーシスになりやすくなります。

腎臓の機能についてはこちらを参考にして下さい。

【関連記事】
腎臓の位置はココ!【腎機能低下の4つの原因や症状をチェック】

 

尿細管

乳酸が溜まる原因にもなっている腎臓障害に入りますが、腎臓の尿細管という部分に障害が起きると代謝性アシドーシスになってしまいます。

 

腎臓の尿細管の働きは、水素イオンを体の外へと排出して、水素イオンのバランスを整えます。この機能が障害を起こすと、水素イオンが体内に溜まってしまい、血液のpHが酸性に傾きます。

 

心疾患

体の中の乳酸が増えることによって乳酸アシドーシス心不全を起こしやすくなります。

 

心臓は血液を体の臓器から手足の指先まで送るポンプの働きをしていますが、心臓の働きが衰えることで腎臓へと送られる血液量が減ることによって乳酸を体の外へと排出する働きも衰えるので心臓に負担がかかります

 

肝機能障害

腎臓の疾患でも説明したように、ビグアナイド系薬剤は血糖値を下げます。

糖尿病の患者さんに投与されますが、その代わりに乳酸が増加します。乳酸が増えると腎臓や肝臓での代謝が行われますが、肝臓の機能が低下すると乳酸アシドーシスの症状になる可能性があります。

また、薬の飲み過ぎ、いわゆるオーバードース(過剰摂取)も肝機能障害になりやすい為に気を付けてください。

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代謝性アシドーシスによる疾患別治療法

 

代謝性アシドーシスの治療方法は、基本的に輸液といって体のバランスを保つために水分や電解質の点滴をするだけでいいとされていますが、原因によってはその他の対応をしなければいけません。

 

下痢

軽度な下痢の場合は輸液を投与するだけで十分といわれています。重度の場合は重炭酸塩も一緒に混ぜて輸液します。

ですが、輸液をする事は一時的な症状緩和にしか過ぎません。根本となる原因を治療することが一番です。消化器が原因の下痢の場合は消化器の疾患を治療するようにします。

 

乳酸蓄積

乳酸が溜まってしまった場合の治療法は、血液透析を行う事や、輸液をいれてメトホルミンや乳酸を強制的に排出すること、ビグアナイド系薬剤の内服を中止する事、炭酸水素ナトリウムを投与してアシドーシスの調整を行う事が挙げられます。

 

糖尿病

輸液インスリンなどの投与によって、利尿作用を勧めることやケトン体の発生を防ぐこと、乳酸が溜まったことと同じように血液透析療法を行います。

血液透析療法とは、血液を体の外に出して水素イオンなどの老廃物除去や電解質・水分量の調整を行います。

インスリンについては多く摂取すれば良くなる、と言うことではありません。過剰摂取や自己判断によるインスリン投与によって状態がさらに悪化することもありますので注意してください。

 

尿細管障害

尿細管障害の場合はアルカリ剤(炭酸水素ナトリウムなど)とカリウムを体に補う治療をしますが、尿細管自体の治療が出来ない為に、症状を緩和するだけの治療になります。

 

代謝性アシドーシスについて分かって頂けたでしょうか?

なかなか難しい病気ではありますが、定期検診などで腎臓や心臓の機能が衰えてきていることや血液のデータに異常が見られた場合には注意してください。

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